霞と側杖を食らう

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鯉よ "鷹未"へ

 気分転換に書籍部を散策していたら、『絶対フォント感を身につける。』というタイトルの本が目に留まった。異様な魅力に惹きつけられ、気が付いたらレジへ足を運んでいた。この本である。

MdN EXTRA Vol. 5 絶対フォント感を身につける。|株式会社エムディエヌコーポレーション

私からは、余計な説明など不要だ。少しでも魅力を感じたなら、一読してみてほしい。フォントに向ける視点を教えてくれる。読み終わった頃には、日常、目の当たりにしている何気ない風景に、一つ奥行きが増えることになるだろう。

  ある分野を学習するとき、その分野をよく知っている人が書いたロードマップがあると、とても助かる。良いロードマップには二種類ある。分かっている人にとってみると必要十分で素晴らしいと感じるが、分からない人には難しいというものと、分からない人にとってみると一歩一歩進むことができた助かるが、分かっている人には冗長だというものだ。良さが異なるからひとくくりにして評価してはいけない。ここでは、よく分かっていない状態を想定しているので、後者の良さを持つロードマップが便利だということだ。

 しかし、いつもそんなロードマップがあるとは限らない。むしろ、ロードマップが整備されているケースはとても少ない。そんなとき、私がやるのが、とりあえず百回試すというものだ。よく分からなくても百回なんとなく繰り返して試していれば、少しは何かが分かるようになる。何が分かっているのかは分からないこともあるが、何か感覚が掴める。これまで、私は、1年でラーメン百杯食べてみたり、1年で本を百冊読んでみたり、アニメを100本見てみたりした(その中でとても良いと感じたものをいくつか挙げると、『ピンポン』『SHIROBAKO』『ばらかもん』『スペース ダンディ』『宇宙よりも遠い場所』『四畳半神話大系』『けものフレンズ』『化物語』『日常』『天元突破グレンラガン』『氷菓』『輪るピングドラム』 といったところか。)。今年は日本酒を100種類飲んでみた。何でもいいからとりあえず100回試してみたり、100時間やってみたりすると、それまでよく分からなかったものに対して、何か差異を見つけられるようになる。

 ただ100回繰り返しているだけでも、何か掴めることがあるが、学習効率が悪い。何が違うかを探っていき、次に活かすということを意識的に行っていった方が効率が良い。統計学的な言葉で表すならば、パターン認識によって、異なるパターン・エラーパターンを把握して、因果推論でその原因を追求し、修正するという作業を愚直に続けていくといったところだろうか。これは、人生のあらゆるものに対する上達のコツだと思われる。このコツが若いうちに身についたかどうかがとても重要だろう。時として、この作業は、精神が磨り減る作業になる。何も見えない暗闇の中で何かを探す作業になったり、自分の誤りを探していく作業になったりするわけで、辛くなることもあるが(楽しくできるということであれば、それは才能なのだと思う。)、これをできるかどうかで、その先にあるものが見えるか否かが決まる。

  上達した者だけが、知っているものだけが眺められる地平というのがある。たとえば、「渋谷のハチ公、上野待ち」というフレーズを聞いて、あぁなるほどと楽しめる人は、渋谷と上野の関係と、ハチ公と上野の関係を知っている人だろう。知らないと何を言ってるか分からないため、分かっている人と地平を共有できない。知っている人だけが感じられる空間構造があって、遠く離れた点と点がつながる感じがとても快感である。それは、秘密の共有のような快感である。これが大っぴらに共有されていることであれば、その快感は薄れてしまう。だから、私はあまり下ネタを言わない。下ネタは人類のほとんどが共有できてしまうから。分かってる人が分かるという世界の共有がやはり楽しい。

 『ピンポン』のドラゴンとペコの試合のシーンが好きだ。あの感覚。共有される高みの世界。私ももっと高いところへ飛んでいきたい。