霞と側杖を食らう

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Sports Analyst Meetup #2の後日譚々

Sports Analyst Meetup #2@データスタジアムにてLTを行ってきました。

そのスライドがこちらになります。

 

speakerdeck.com

 

自分の発表力不足もあり、きちんと言いたいことが伝わったかどうかは分かりませんが、もし詳細が気になった方がいらっしゃいましたら、以下の記事を読んでみたり、お気軽にお声をかけてください。

コードや詳細はこちらの記事にまとめてあります。

moratoriamuo.hatenablog.com

この分析は、遺伝的アルゴリズムだとかガウス過程とか高度なものや面白いデータは一切使っておらず、言わばサイコロを振るだけの簡単なシミュレーションなのですが、簡易なモデル設定から本質を突けている面白いものだと、自分では思っています。

モデルの発想元は大学に入ってから頭を使ってバドミントンをするようになったところにあります。中学高校とバドミントンをしていましたが、当時はどんな状況だろうと速い球を難しいところに打てればいいと考えていました。リスクなんて考えず、とりあえずスマッシュを速く打てばいいと思ってました。難しいショットが決まれば楽しいですからね。でも、それでは強くはなれなくて、リスクコントロールをしていくと安定して勝てるようになるということを大学のサークルで強い先輩方に教わって学んでいきました。こういったリスクコントロール術はあまり教えてくれるところはないし、教本などにもなかなか書いていないことだと思います。さらに、人に言葉で伝えようにもなかなか伝えるのが難しい。そんなわけで数理モデルに落とし込んで普遍的に伝えられるようになればいいのになと思っていて、半年前くらいになんとなく作ってみたというのが、モデル作成の経緯です。

ゲーム理論を学んだことのある方は、「しっぺ返し戦略」や「トリガー戦略」というネーミングに聞き覚えがあったかもしれません。これらは、囚人のジレンマの繰り返しゲームで出てくる戦略です。今回のモデルもゲーム理論ライクなモデルでした。実際のゲーム理論での分析との違いは、ゲーム理論ならば戦略とそれに対応する利得が与えられて、それを最大化するようにプレイヤーが戦略を選択するとして、どのような戦略選択が均衡として落ち着くかを分析するのに対して、今回のモデルは戦略を選ぶとどのような利得(勝ちか負けか)を計算して終わりというものでした。ゲーム理論風に、分析を続けるならば、互いに天邪鬼戦略を選ぶのが均衡になるものだと思われます。

 

LTの時間が5~10分だったのは、発表者にとってはやりやすかったです。超メジャースポーツじゃない場合、スポーツの紹介が必要になってくるので、そこに時間がかかります。自己紹介、スポーツの紹介、分析の紹介とやると、5分じゃ厳しいように思います。研究室や職場、一つのテーマに絞った勉強会のLTであれば、互いに何を知っているかがある程度共有できているので、5分でもいいかもしれませんが、spoanaのように、いろんなスポーツの方がいる場では、5分より10分の方がやりやすいように思えました。

 

 

LT担当があったので、緊張していて、発表全てを集中して聞くことはできていないのですが、以下に、発表中に自分の考えていたこととか絡めながらの感想を書いていきます。

 

まず、全体として、スポーツの分析について、見えるデータの分析と見えない選手のメンタルや思考を炙り出したり、それらに影響を与えたりするのが面白いなって思いました。次に、各々について、振り返りながら記していきます。

spoana.connpass.com

 

エンデュランス競技の話
「自信をもって休むことができる」ってのが良かった。これ大事だなって。こういう非自明なことを明らかにしてプレーを改善していくことが分析の重要な役割の1つなはず。

 

ブラインドサッカーの話
すごいスポーツだと思った。選手らは何が見えているんだろうか。コートの外からの指示者や見えているキーパーはどのように指示を送っているのかが気になった。日本の戦術がカウンター中心から、相手陣地で展開やキーパー軸でのパス回しなどは理に適っているなと思った。ルーズボールの割合のデータを示していたところも良かったです。まだまだ戦略の幅はありそうで、これから盛り上がりそうな競技だと思いました。

 

・相撲の巴戦の話

巴戦の試合回数の理論値とのズレに着目したものでした。
相撲の話といえば、ヤバい経済学でも挙げられていますね。こちらは最終戦の勝ち越し負け越しがかかった試合での勝率のズレを見たものでした。以下がリンクです。

http://pricetheory.uchicago.edu/levitt/Papers/DugganLevitt2002.pdf

この論文は、構成、とくにイントロがとても素晴らしいって話を経済学者の川口先生がツイートしてました。
巴戦の各プレイヤーの勝率については、数学の問題として定式化していて、最初の試合を待つ人が少し不利になるなんて話があって面白いです。

mathtrain.jp

解法1みたいな再帰的な構造がパッと見えるといいなと。解釈としては、一回目待機マンは初戦から絶対に負けられない分だけ損してるんだなと思います。

この確率構造のシミュレーションはspoana運営者の一人のu++さんがやってますね。

upura.hatenablog.com


セーリングのデータ計測の話
自分でデータをスマホで記録するというアイデアが良かったです。たしかにGPSデータや角度のデータなど取得しやすいですし。自分でも動画を撮ったりするけど、自分が扱えるデータに落とし込むのが難しいなと感じていたのでなるほどと。分かりやすいデータにすると、日々の自分の成長が分かって、継続するモチベーションにもなっていいですね。

 

・卓球のTリーグの話
サービス側での得点率とレシーブ側の得点率で、サービスで安定している人の方が強い傾向が見えました。卓球はサービス2回で交代でしたっけ。当然サービスの有利性はスポーツによって違いますが、サービスの重要性は自分がバドミントンをやっていて実感しています。サービスというプレーは、相手の状態によらずルールの範囲内でなら自分の決めた体勢で打てる唯一のショットなんですよ。他のショットは相手の打ったものに依存してしまう。ここを安定させない手はないと思っています。

 

富士登山競争の話
出場資格獲得から難関とあって、ハンター試験か!って心の中でツッコみましたね。つらみ指標の作成は面白い試みだと思いました。高尾山比で、あやしい指標かもしれないということでしたが、高度による空気の補正(METS?)の働きが強すぎたように思えます。そのへんの補正値を調整すると良いかも知れませんね。あと、つらみは瞬発系と持久系で異なるとことかが大事な気もします。個人的には持久系がとてもつらいので。あと、いつか富士山登ってみたいなってなりました、ゆっくりで。


・サポーターの熱量の話
SNSテキストマイニングの感情分析の話。リアルタイムで分析していけるってすごいですね。個人的には会社紹介のところの、知的財産 の裁判における判決の予測が刺さりました。最近、中国の裁判がAIで、なんてニュースを見かけたような気がしたので。


・サッカーのボール保持力の話
スポーツの論文とかあまり知る機会がなかったので、MITの論文とか紹介を受けて、こういうのがあるのかと知れてよかったです。サッカーのようなメジャースポーツはデータや手法が揃っていていいなぁと少し嫉妬したりもしました。

 

・サッカーのポジショナルプレーの話
ボロノイで守備範囲を見たりしていました。トポロジカルデータ解析の話は一度別のところで発表(以下のスライド)を聞いたくらいですが、面白そうな手法だなと気になってはいます。

https://www.slideshare.net/YutakaKuroki/lytics-112543204

ボロノイは商圏の分析とかに使えるかなと思ったりもしました。あと、ボールを持っていないときの動き、オフザボールの動きとか好きなので、そういう分析が出てくるといいな(探せばあるとは思いますが)と。バドミントンをやっていても、ダブルスで球を打っていないペアの動きがコースを制限したりして、実は重要な役割を果たしていると感じています。
少し関係ないですが、ランディ・パウシュという方の最後の授業というタイトルの講演を昔見たときに、こういう考え方を得たのを覚えています。彼が子供時代に、アメフトのコーチにまず教わったのは、アメフトは11人vs11人でやるが、ボールを持っているのは1人だけで、ボールを持っていない21人の動きが実は重要で、その練習をやるんだってことが語られていました。

【全文】ランディ・パウシュ「最後の授業」--余命半年の男が生徒たちに遺した「夢の叶え方」 - ログミーBiz

 

リオ五輪のメダル予想の話
アカデミアの人がこういう場にやってくるのすごくいいですね。ロジスティック回帰でも、汎用的にこれだけの精度が出るんだっていうのがいい。得点比で強さを測るのが肝だったように記憶してます。6月に論文として出版される予定らしいです。

https://search.ieice.org/bin/summary_advpub.php?id=2018EDP7315&category=D&lang=E&abst=

この話とは少し脱線しますが、今回、自分の分析ではやらなかったことの一つとして、点数差に応じて戦略変えるということがありました。というのも、点数差が開いて勝っていれば全力を出さなくてもいいかというものとか、負けている側はもう勝てないからいいかと諦めたりとか、人間の行動が点数差に影響されるだろうなという予測があります。サッカーだと2-0が危ないとかよく言いますよね。個人的な解釈ですが、勝てるもんだと慢心して集中力が欠如しているところで、相手の奮起で得点を入れられると、不安が連鎖したり、各々が負けないよう頑張ろうと頑張るが、統率がズレて穴が開いてさらにやられて、悪い状況が増幅するんだろうなと思っています。バドミントンでも、個人的には、敵のペアの各々が自分より強くても、ペア同士のコミュニケーションがとれていない相手は、サッカーの2-0からの逆転のような状況を作り出すと、大金星がとれたりする気がします。


・部活の話
練習時間とかレギュラーとか人間関係とか難しそうですよね。実は、話を聞きながら北宇治高校吹奏楽部を思い浮かべていました。個人的にも、中高は部活、大学はサークルと所属していたのですが、部活は強くなることという一つの方向をメンバーが向いているがメリットでありデメリットである一方、サークルは各々がいろんな方向を向いているというのがこれまたメリットでありデメリットであるなぁと思いながら過ごしてきました。

 

登壇する機会を与えてくださったSports Analyst Meetup運営の皆さま、参加者や関係者の皆さま、ありがとうございました。今回が初参加でしたが、スポーツの分析の面白さに惹きつけられたので、また自分で分析してみたり、他の方の分析を聴いたりしたいので、また参加していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。