霞と側杖を食らう

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「成功裡」という言葉との衝動遊戯

【ABSTRACT】

「成功裡」のような「○○裡」は、"~~ly"という英語もしくはそれに関係する言葉の和訳で造られたものだという仮説の検証を行ったが、筆者の力不足のため完遂はできなかった。

【OBJECTIVE】

「会は成功裡(裏)に終わった。」という文に、自分の日本語感覚は違和を覚える。全く日本語として問題ないのは事実なのだが、「成功裡」という単語がどうも私の日本語感覚にとってみると自然ではないのだ(こういうことは偶に起こる)。過去に一度、この「成功裡」という単語に齟齬を感じたがスルーしていたのだけど、最近、あることが思い浮かんだ。
英訳すると、"The meeting ended successfully."となる。明治時代以降、英語文献の和訳作業の中で、できた言葉なのではないかという仮説に行き着く。つまり、何が言いたいのかというと、successfully = successful + ly = 成功 + ly という式で以て造られた語なのではないかという仮説が浮かんだのだ。lyのところ、裡で上手く意味が合うし、この訳し方、天才では!って自画自賛して和訳した日本人の存在があったのではないか。そういう想像が膨らんだのだ。
秘密裡という言葉もある。これは、secretlyから来ているのではないか。そんなことを思いついたけど、実際のところどうなのだろうか。これを調べていきたい。

【METHODS】

まずは手始めにgoogle大先生にお話しを伺った。しかし、これでは解決しなかったので、ジャパンナレッジで調べてみた。

【RESULTS】

まず、googleで、「成功裡」「成功裡 secretly」「成功裡 語源」などと検索をかけてみたところ、2件の記事が、なるほどと思った。
「成功裏」とは?意味や使い方を解説 | 意味解説

裏 と 裡 : 語句楽散歩
だ。 「裡」には、内側の意味があり、「裡」を「うち」と読むこともあるということが分かった。(後者の記事は、裏原宿を台湾の文章で使うとき、裡原宿と書いていいかどうかという話で、面白かった。)

「裡」という言葉の知識はついたものの、語源は何なのか分からない。せめて初出が日本に西洋文化流入する前であるならば、自分の立てた仮説は否定される。ジャパンナレッジLibを使って、検索をかけて、語源情報もしくは凡例情報を探してみて、関係しているところを以下に、引用する。

3 その状態で。「暗暗裏・成功裏・秘密裏」

"り【裏】[漢字項目]", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2018-11-03)

【二】〔語素〕
状態を表わす漢語に付いて、その状態のうちに物事が行なわれることを表わす。
竹沢先生と云ふ人〔1924〜25〕〈長与善郎〉竹沢先生の人生観・二「真に生きる実践的な力を得、不退の安心裡に住し得る底の現実力となって来なくては嘘だと」
多甚古村〔1939〕〈井伏鱒二〉休日を待つ「隠密裡に調査すべしとの別紙の書類が封入され」

"り【裏・裡】", 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2018-11-03)

4 (「裡」とも書く。「…のうちに」の形で)物事の行われる状況を表す。「暗黙の―に理解しあう」「会は成功の―に終わる」

"うち【内】", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2018-11-03)

(13)(「裏」「裡」を訓読したものか。多く「の」を受けて用いられる) 物事の経過する間の状況、環境などを示すのに用いる。終始そのようなさまであるあいだ。「おたがいに暗黙のうちに了解しあった」
*米国及び英国に対する宣戦の詔書‐昭和一六年〔1941〕一二月八日「事態を平和の裡に回復せしめむとし、隠忍久しきに彌(わた)りたるも」

"うち【内】", 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2018-11-03)

人の知らないうち。ひそかな状態。内々(ないない)。
*内地雑居未来之夢〔1886〕〈坪内逍遙〉二「皮相論者が下院の勢力を称歎するにも係らず、其実暗々裡(アンアンリ)に、国家の権威を彼貴族輩が握れるならずや」
或る女〔1919〕〈有島武郎〉前・一四「何時でも暗々裡(アンアンリ)に事務長の為めにされてゐるのを意識しない訳には行かなかった」

"あんあん‐り【暗暗裏・暗暗裡】", 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2018-11-03)

どの凡例も明治期以降のもので困った。ただ、『日本国語大辞典』の「うち」の説明で、「裡」を訓読して、「(の)うち」にという使われ方が疑われている。もしも、この使い方が西洋文化流入以前の漢文にあるのだとしたら、仮説が否定されてくれるのだが、これ以上の調査はできなかった。

【CONCLUSIONS】

「○○裡」は、"~~ly"という英語もしくはそれに関係する言葉の和訳で造られたものだという仮説は否定できなかった。こういう文献調査・言葉の調査のような訓練を受けたのは大学の教養の講義くらいで、この方面では私は力不足だと感じた。誰か、この仮説の検証を引き継いでいただける方がいれば、ぜひ引き継いで検証していただきたい。
(あと、ジャパンナレッジすごい。)

【REFERENCES】

【RESULTS】にて、それぞれ記載しているので、今回は省略させていただきます。