霞と側杖を食らう

ほしいものです。なにかいただけるとしあわせです。[https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/2EIEFTV4IKSIJ?ref_=wl_share]

人差し指の愛人

 たとえば、目的地までの道が分からないだとか、お店で商品が分からないだとかで、外で何かに困ったとき、どうするだろうか。マップを調べたり、フロアをくまなく歩いてみたりするだろうか。それとも、とくに調べたりせず、周りにいる人や店員に聞くだろうか。どちらが良いとか悪いとかが言いたいわけではない。人に聞く前にちゃんと調べろというのも一理あるし、聞けばすぐ解決することに時間をかけるなというのも一理ある。そんなことはどうでもよく、ただ、この問いに対する答えには、回答者の意識の内側にある、調べるコストとコミュニケーションコストとでどちらが重いかが現れてくるものだと思われるのだ。コストが小さい方の選択肢がきっと選ばれている。

 では、このコストは一体何で決まるのか。それは、普段から調べ慣れているか、喋り慣れているかということであり、生まれ育った家庭内環境と家庭外環境から形成される習慣に依存する。私は、出来る限り自力で調べてしまいたい側の、つまりは、コミュニケーションコストを重く見積もってしまう側の人間なのだが、人にお願いするのは別に悪いことではないし、お願いすることができるのもまた一つの能力なのだとは思う。しかし、人にお願いするしかできないのは少し辛いものなのかもしれない、そう、勝手ながら、推測してしまう。

 『教育ボランティアで出会った小4の子の話』(https://note.mu/yontengop/n/n8d68fbddb1e8)というタイトルの文章(変更前の元タイトルが『小4で人生が決まってしまう話』だったわけだけども、そっちのタイトルの方が好きだった。)を最近読んだ。問題文の意味が捉えられず、学習カリキュラムについていけなくなってしまった、とある小学四年生の女の子の話が書かれていた。この女の子は、この状況では、余程衝撃的な何かが起きない限り、勉学の面において今後も学校の進度にキャッチアップするのは難しいと思われる。勉学面で上手くいかないからといって、辛いものだと決めつけてしまうのはよくないが、辛いケースも多々あるだろう。

 小4の子の話の最後に紹介されていた『ケーキの切れない非行少年たち』(https://www.amazon.co.jp/dp/4106108208/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_hP6GDbVGKKMJA)も読んでみた。著者が医療少年院に勤務して得られた経験を踏まえて非行少年たちの特徴や更生方法を記述している。その特徴の一つとして、認知機能の弱さが挙げられている。見る力、聞く力が不足していると、日常のスピードから置いていかれて、追いついていけなくなる。認知能力が土台となって、未来や相手の立場の想像、自己コントロールができている。認知能力が歪んでいれば、それらがとても困難になるということは、むべなるほどとなった。

 人がどのように認知しているかを正確に知ることなんてできないから、人に何かを教えるのは難しい。何が見えて何が見えないのか、どこから何から分かって分からないのか、これらを把握できないと、教えるのは難しい。自分と同じような道筋を辿ってきている人ならば、相手の認知が想像しやすく、教えることが容易くなる。

 最近、バズッていた、『低学歴と高学歴の世界の溝』(https://anond.hatelabo.jp/20130809115823)という記事と、その記事が書かれるきっかけとなった『私のいる世界』(http://luvlife.hatenablog.com/entry/2013/08/07/221155)という記事も読んだ。「世界」という表現で適切なのかは分からないけれど、見ている風景が相当程度に異なる人がいるのはきっと正しい。「どこかでパイプ繋げて」という言葉があった。では、どう繋げたものだろうか。上に書いたように、違う道筋を辿ってきている人に何かを教えるのは難しい。テイラーメイドな教育になってしまうため、かなりのコストを要する。具体的な有効な解決策は何も思いつかない。簡単に思いつくようなものなら、既に実行されているであろう。やはり人では足りない。認知能力を上げるのに役立つドラえもんのような教育機械を作ってしまうのが一番の近道のパイプになるのかもしれない。学校教育のカリキュラムに縛られずに使える教育プログラムが作れるのであれば、今まで、そしてこれからも私がやるせなく感じている溝のようなものを埋められるのかもしれない。

 とりとめもなく読み散らかして、ぼんやりと頭にあったことを無理くり繋げて雑然と書いてしまったが、この記事もまた、一冊のオススメで締めることにする。