霞と側杖を食らう

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喫茶店ルノアールでつかまえて

こうして文章を書き始めるとなると、結婚の予定はいつだとか、自分の健康について気にしていることはあるかだとか、年収はいくらだとか、そういうしょうもないことを知りたがるかもしれない。でもはっきり言ってね、その手の話を書く気になれないんだよ。一度ウケたもんだからって繰り返しがちなワンパターンなネタだとか、誰でも分かる下世話な話や人の悪口だとか、そういうことを書きたいわけでもないんだ、けっしてね。今から書くのは、ここ1、2年間に起こった、マジな話、気に入らないことをやっている奴らのお話だ。

まず最初に、奴らに出会ったのは、趣味でやっているバドミントンのサークルだ。社会に出てからバドミントンを続けるには、どこか社会人サークルに入らなくてはならなかった。サークルがメンバー募集している掲示板をネットで見つけて、いくつか回ってみた。その中の一つに、奴らはいた。何度かそのサークルに遊びに行ったところ、バドミントンのレベル的にも、会話の内容的にも、ある程度、自分と合っていた。サークルの代表の人と仲良くなってきたところで、奴らの一人は、話を持ち掛けてきたんだ。「今度やるイベントに、めちゃくちゃすごい人が来るのだけど、君も来ないか?」と。あ、こいつらは黒だ。真っ黒なんだと、このとき確信した。このとき確信したというのは、それ以前にグレーだと思う点がいくつかあったからだ。お酒を飲んでは、やたら夢を語りたがるし、何か夢はないのかと聞いて、語らせたがる。夢の話も、不労所得がどうだかとかって話をしてくる。この時点でグレーで判断を止めていたのは、これまで真っ黒な奴に実際に会ったことがなかったからだ。仲良くなってから、わけのわからないイベントに誘って、人のお金をむしり取ろうとしてくる行為、その魂胆に酷く失望し、少しの間、人間不信になった。

また別の機会でも、奴らに遭遇した。バドミントン以外の愉しみの一つで、ボードゲームを好んでいて、知り合いの知り合い経由で、5、6人でボードゲームをやりながらお酒を飲もうということで、一度集まった。場所は、新宿の歌舞伎町あたりの居酒屋だった。このときは、ふつうに、ふつうのボードゲームをやってお終いだった。「ふつうに」と言っても、居酒屋は値段より多少不釣り合いなサービスだった(歌舞伎町周りだと、もっと酷いところがたくさんあるから、まだマシとその場では納得してはみたが、おそらく幹事の奴は店からキックバックを受け取っていると思う)。まぁ、知らないボードゲームを楽しめたので、次に呼ばれたときも参加してみた。東京タワー付近のレンタルスペースを借りたので、そこでやろうとのことだった。とくに中身も聞かずに現地に行ってみたら、3、40人くらいいただろうか(今になって思えば、集めた数に応じてキックバックが入る仕組みなのだろう)。想像していたより人数は多いが、テーブルに分かれて、それぞれのテーブルでゲームをやることになっていた。さて、どんなゲームをやるんだろうかと見ていたら、どうやら、対戦ゲームや協力ゲームといった類じゃないゲームだった。ふつうのボードゲームは勝ち負けがある。ふつうなら、対戦している人との戦いだったり、協力してゲームマスターを倒すなり、共通課題をクリアするかのようなものである。この場で始まったのは、モノポリーに近いが、勝ちや負けの存在しないゲームで、キャッシュフローゲームというものだった。簡単にいうと、すごろくのようにマスを進めていって、みんなが不労所得を得て終わりというものだった。ルール説明をした奴らの一人は、一見、ノリが良いように見えるが、どこかコミュニケーションに、ぎこちなさが感じられる奴だった。どうも無理をしているというか、不自然というか。ゲームの内容も、無駄に夢を語らせたがる。やれやれ、真っ黒だ。こいつらも奴らなんだと、ガッカリした。ゲーム名をググってみても、同様の報告が見受けられた。気持ち悪くなって、途中で抜け出して、近くのお店でトランプ大統領が食べたとかいうハンバーガーを食べて帰った。

奴らは、夢をやたら語らせたがるし、コミュニケーションがどこかおかしい。後ろめたさがあるのだろうか。バドミントンのサークルにいた奴は普段見かけないエナジードリンクを飲んでいた。奴らの仲間から買ったのだろうか。目元や顔のハリが、連日あまり眠れてない人のそれにとても似ていた。これはボードゲームにいた奴の一人もそんな感じがしていた。おかしさの雰囲気はだんだん掴めてきた。不思議に思うのは、奴らは人を集めるのが上手い気がするってことさ。人の集め方に関するマニュアルでも出回っているのだろうか。人を損させて自分が得する仕組みを作ろうとする奴らの、ふざけたシステムがぶっ壊れしまえばいいのに、まじな話でね。

僕の話はこれでおしまい。これを書く少し前、とある喫茶店にいたんだけど、近くのテーブルで、悪い大人と悪い友人の紹介のせいでFXの情報教材に49万円を捨ててしまう人がいた。ハメられているのは、大学生くらいだろうか。自分の会計をした後、そいつらのテーブルの近くで大きな溜め息を吐いて、外に出た。やれやれ。これを読んでいる君たちは、こんないかれトンチキな奴らに出会わないことを願うし、もし会ってしまったら、距離をとってほしいし、できることなら、必勝法ってやつを思いつくものなら、そういうい仕組みを滅ぼしてほしいんだ。それが僕の夢ってやつなのさ。