霞と側杖を食らう

ほしいものです。なにかいただけるとしあわせです。[https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/2EIEFTV4IKSIJ?ref_=wl_share]

Yesterday is history, tomorrow is mystery, today is a gift, that's why it is called the present.

今年は日本の中世史が個人的な一大ブームになっている。ブームの第一波は、山田尚子監督によってアニメ化された『平家物語』だった。山田尚子監督の作品は、画角の切り方や音の使い方による緩急が心地良いように思う。平家物語を見ながら中学高校時代の日本史や古典の知識が記憶の奥底からサルベージされたのも面白かった(建礼門院徳子だとか、敦盛の最期などなど)。第二波は、現在進行中であるが、大河ドラマの『鎌倉殿の13人』だ。平家物語では平家側の視点から見ていたが、鎌倉殿では源氏と北条家側からの視点で見れているのが面白い。今は壇ノ浦の戦いも終わったので、平家物語のその先へ歴史が進んでいくので、これもまた楽しみだ。第三波が、中公新書から出版されている伊藤俊一『荘園』だった。この本を読んで、荘園を中心に中世の日本史が語られて、平家物語と鎌倉殿の背景が色づき始めた。たとえば、鎌倉殿では一瞬のシーンでしかなかったが、寿永二年十月宣旨の歴史的意義が分かっているだけで、一瞬の輝きが変わってくる。そして、第四波となったのが、湯浅政明監督のアニメーション映画の犬王だ。南北朝時代の異形の能楽師と盲目の琵琶法師の話なのだが、冒頭から心を掴まれて最後まで離されることはなかった。関連知識を獲得して、もう一度映画館に観に行きたいと思っている。

日本の中世史もハマっているが、サイエンスフィクションの古典も読んでいる。レイ・ブラッドベリの『華氏451度』から始めて、ジョージ・オーウェルの『1984』を読んで、今はジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』のシリーズを読んでいる。SF作品はこれまであまり読んでこなかったし、読みにくい印象があったのだが、読んだものはどれも名作として残り続けていることもあって、ページをめくる手は止まらずに読み進められている。『星を継ぐもの』は月面で地球人とは異なる人間の遺体が発見され、遺体とその遺品から地球の科学者が、遺体は何者なのかを解き明かしていく話なのだが、遺品の文字を解読する最初の手がかりとなったのが手帳のようなものに書かれていたカレンダーだった。これを読んだ後にスマホゲームの7 days to end with youという言語解読系のゲームを偶然やったのだが、文字解読の一歩目となったのがカレンダーだったので、「これ、『星を継ぐもの』でやったやつ!!」となって面白かった。

つい最近、E・H・カー『歴史とは何か』の新版が出ていた。この本は岩波新書版でちょうど昨年末に読んでいた(5年10年積読していた気がする)。歴史家がやることは、過去の事実を陳列するのではなく、どのようなコンテクストで語り紡ぐかということで、過去と現在、未来との対話なんだとかいうことが書かれていたように思う(捨象と選択の点は、数理モデルを考えると似ているように感じた)。今年はロシアがウクライナに侵攻を仕掛けたわけだが、この事象を見るとき、過去と対話するならば、個人的には、主権国家体制の成立、国民国家の形成、総力戦と戦争違法化体制を思い出す。過去の歴史を知っているから、現在起きていることの位置づけを理解して解釈できるものだ。そして、未来への意思決定をサポートしてくれる(歴史を引用する話で言えば、最近聞いたふむふむfmという番組のエピソード23の『「平成」を金融から振り返る 四年(1992)』が良かった)。

どんなものにも歴史があって、今を知って、その過去を知り、今と過去が絡み合って香り豊かな味わいになる。現在の横の広がりと過去から連なる縦の流れが、多次元の繋がりを見せて将来の愉しみにまた繋がる。やはり、故きを温ねて新しきを知る、以って師と為るべしなのだ。